昭和のおっさん

発達障害 ASD ADHD の子の話とか趣味雑談とか

本「運命の子 トリソミー」松永正訓

運命の子 トリソミー: 短命という定めの男の子を授かった家族の物語

中古価格
¥179から
(2021/6/12 22:42時点)

前回と同じ先生の本ですね。

遺伝子異常で短命な子を持った親は、その運命をどう受け止め生きていくのかという主題は前回の本と同じですね。障害を持った人の人生、障害を持った子を授かった家族の人生というのは当事者になってみなければリアルに考えることは難しいし、そもそも考えること自体中々ないでしょう。

この本に出てくる子は重度の心身障害児で、生まれたときからいつ亡くなってもおかしくない状態です。少し前まではこういった子は治療はせず自然に亡くなるままにしていたそうです。まあ積極的な治療をするかどうかというところは答えが白黒で出ることではありませんが、だからこそよく知りも考えもしないで答えを出さないようにしたいものです。

さて、こういった子を持った親はもちろんひどく苦しみ悩みます。しかしこの本で出てくる何組かの家族は、時間をかけて障害を受容し幸せを見つけます。

ある母親は自分の子について「天使です」と言います。天使のような子、という比喩ではなく天使なんですと言います。

いつ亡くなってもおかしくない子の人生は未来がありません。今を生きるエネルギーの塊のような存在です。そんな子とともに生きるということは「今この瞬間が一番大切なんだ」ということにたどり着きます。

人間は当然誰でも死ぬし、限りある時間の中の今を大切にして生きなければもったいないわけですが、死が身近にない普通の人はなんとなくずるずる生きてしまいがちなものですね。

もちろん子どもは親の人生のためだけに生きているわけではないですから、重い障害を抱えたまま生かすのはエゴではないか、という考え方もあるでしょう。

しかし、目も見えず耳も聞こえない子でも育っていくにつれ手足を動かして自己主張しお風呂に入って笑顔になり、その子なりの人生を生きているということでもあります。

こういった話は重い上に答えは個々にしかないものですが、誰でも当事者になることもあります。いろいろな角度から考えられるように勉強していきたいものです。