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本「失われた時を求めて 14」プルースト

【中古】失われた時を求めて 14 /岩波書店/マルセル・プルースト(文庫)

価格:1,216円
(2022/3/31 13:17時点)
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いよいよ最終巻です。この本も結構ページ数があるかと思いきや後ろに250ページくらいの索引があったりするので本編は300ページほどです。
サロンに入った「私」はそこで時が経ち変化した人々を見て、時が人に与える影響の大きさに愕然とします。
そしてその変化は自分自身にも起こっていて、それを人々の反応から気付かされて驚いたりします。
その中で、美人は時が経ち崩れると劣化するがブスは怪物だから時の変化に影響されないとか、中々現代では問題になりそうな表現しちゃってて最高です。

このサロンはゲルマント大公のサロンなのですが、ここでのゲルマント大公妃とは実はかつては貴族のサロンに対向するブルジョアのサロンの主催者だったヴェルデュラン夫人です。ここに集まった人々もかつては貴族のサロンとは縁遠かった人々です。

ゲルマント大公自身も老齢ながらオデットの愛人となり牛耳られています。シャルリュス男爵は耄碌し、ロベールは戦死し妻のジルベルトが幅を利かせています。かつての大貴族ゲルマント家がブルジョアに乗っ取られているわけですね。

しかしジルベルトとロベールの娘が将来名もなき文士と結婚して家名を落とすことまで語られています。

結局、人間は生きている間に変化し続け、記憶も置き換わり、そんな人々が集まって「今」ができていきます。

サロンに集う人々の変化を見て「私」は「今」というのは延々と続く「時」の中にあり続け、どんな過去の時間もその時の「今」であり人々それぞれの「今」や「変化」があったのだと気づきます。

そんな世界で永遠に変わらず大切なものを残すのが芸術であり、「私」はそんな小説を残り短い人生でなんとか書こうと決意して物語は終わります。

 

結局全部読み終わるまでに10ヶ月位かかりました。

万人にお勧めとはとても言えませんが、ジョギング始めたらマラソンに挑戦するようなもんで、いい経験じゃないでしょうか。もう2,3冊くらいの小説なら長くて手に取りづらいとは思わないことでしょう。

「完」