本「ある奴隷少女に起こった出来事 ハリエット・アン・ジェイコブス
ある奴隷少女に起こった出来事 (新潮文庫) [ ハリエット・アン・ジェイコブズ ] 価格:693円 |
200年くらい前、日本は江戸時代ですね。アメリカ南部には奴隷法がありました。
実際に奴隷だった作者のドラマティックなノンフィクションです。
昔の文章なわけですが、訳文が平易でとても読みやすいです。
大航海時代以後続く黒人の迫害の歴史はいつの時代もひどいものですが、リアルな当事者の話は迫力があります。この作者は幸運にも逃亡に成功して自由になりますが、捕まった奴隷がどうなるかの話も書かれており無数の悲劇があったことが伺われます。
奴隷所有者の白人の暴虐と奴隷の悲劇が書かれているわけですが、それだけではありません。白人の中にも黒人を人間として付き合い助ける人もいるしスパイのように白人に協力する奴隷もいます。作者が強調するのは「奴隷法」というものの邪悪さです。
有名な刑務所の実験で、囚人と刑務官を芝居させるとそれぞれが過剰適応して虐待が始まったりするというのがありますが、つまり「奴隷制」という制度が人間の残虐さを引き出してしまうのですね。
現在も感染対策などで喧々諤々ですが「ルール」に縛られて安易に批判するというような方向に行きがちですね。なにが正しいのか本質を考えつづけないといけませんね。