昭和のおっさん

発達障害 ASD ADHD の子の話とか趣味雑談とか

本「アスペルガー的人生」リアン・ホリデー・ウィリー

商品リンクがありませんでしたが、東京書籍、ニキ・リンコ訳 の本です。

題名の通り、アスペルガー症候群の当事者の本ということになりますが、細かいことを言えば作者さんは診断はされてないそうです。作者の三人のお子さんのうちの一人が「どうも他の子と違う」と思い続けた後にアスペルガーの診断を受け「私と同じだ」となったようです。

作者さんはこの手の話には珍しく10代後半まで比較的平穏に暮らせたようです。本人はもちろん「どうも私は周りの人とは違う」と感じていたそうですが。その「違い」が外からは分かりづらいのがASDですが、この本では作者がその「違い」の内面を書いているので、如何に考え方や感じ方が違うかが伺えます。

その後、大学や社会人はお定まりに躓きつつ良い旦那さんやお子さんに恵まれながらも「普通」についていけない失敗や思考回路を書いていますが、この手の本には珍しくあまり暗い印象がなく前向きな感じですっきり読めます。

この本の中で印象的なのが、ASDのお子さんと作者があたかも定形同士のようにわかりあえるところがあり、それについて作者が「旦那や他の子も気持ちをわかろうと努力はしてくれるが無理だろう」と書いています。おそらくその難しさはASDの方が定型の感情を読めないことと同じようなものなんでしょうね。

私もASDの嫁と娘の気持ちを尊重したい気持ちはあっても、彼女たちの頭の中の動きには全然ついていけません。奇っ怪な反応に「なんでだよ」「どうなってんだよ」ばっかりです。面白いけど。

この本の書くアスペルガーの世界はうちの二人にも当てはまるところも多いですが、敢えて違いを書いてみると、この本の作者は「高IQ」です。これは当たり前でそうでなければ自他の違いを観察研究して本にするなんてことはできないですね。この手の本を読むと作者の努力、対策が色々書かれているわけですが、うちの二人のようにちょっと頭が弱いと無理ですね。

また、ASDの方の本でも大概、旦那さんや友人や自分の子供については「とても大事な人である」という気持ちを持っていますが、うちの二人はなんとびっくり、自分以外の人に対して特別な感情を持っている様子がありません。嫁は他人同様に私も怖がるだけだし、自分の娘についても自分にとって特別な人間なんだというような感情はまったくなさそうです。娘はというと「家族」という概念を理解しておらず私や母を「父」「母」なんだと伝えると「そんなわけない」「気持ち悪い」とか言っちゃってます。母のことは動くぬいぐるみだと思ってるしもう最高ですね。

本「私の障害、私の個性。」ウェンディ・ローソン

私の障害、私の個性。 [ ウェンディ・ローソン ]

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感想(2件)

ASDの当事者本ですね。

幼少の頃から「自分は他の人とはなにか違う」と感じながらもそれがなにかはわからず生きてきた自伝ですね。

実際に起ったことと、その時作者がどう考えていたのかが書かれているとASDの考え方が如何に定型と違うかがわかりますね。

とにかくASDにとって現実世界はカオスで刺激が多すぎ、なにが起こるかわからず不安と恐怖に襲われる、というのはうちの二人にそのまま当てはまりますね。

その他もまあ色々当てはまるわけですが。

全体的にはページ数も多くなくさらっと読めますがそれだけにちょっと急ぎ足で散漫な感じもします。もっとがっつり読みたいですね。

長い小説読んだ後だからかしら。

本「戦争育ちの放埒病」色川武大

【送料無料】 戦争育ちの放埒病 銀河叢書 / 色川武大 【全集・双書】

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感想(0件)

色川武大阿佐田哲也のエッセイ集ですね。

CDで言うところのシングルB面曲とかアルバム未収録曲の編集盤みたいなのです。

ファンなら喜んで買って損はないわけですが、メインの作品を読んでない方はそちらからで良いでしょう。中々のお値段ですわね。

作者は10代~20代を戦中戦後で生きてきていて戦争が日常の空気感を感じるところもあります。丁度今時分もそんなニュースがありますね。こういうところから戦争とはどんなものなのか考えるのもいいんじゃないでしょうか。

 

怪しい来客簿 (文春文庫) [ 色川 武大 ]

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感想(3件)

阿佐田哲也なら「麻雀放浪記」で良いわけですが色川武大ならこれで良いですね。

色川名義の最初の作品で短編連作集です。

本「自閉症という知性」池上英子

自閉症という知性 (NHK出版新書) [ 池上英子 ]

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感想(1件)

自閉症ASD)は障害ではあるわけですが社会性や身体感覚の障害であるとともにそれと関連して認知特性(物の見方、感じ方、考え方なんかですね)自体がいわゆる定型とは違うというところがあります。認知特性自体は定型とASDで分かれているというものではなく人の個性そのものでもありますが、ASDの方は特に少数派な特性から社会性の障害が出るようなことで障害認定されるわけですね。

しかしこの少数派の認知特性が特殊な才能や魅力につながることもあるよね、という内容です。

「障害」が取り除かれるべき障害なのか個性なのかというのは色々難しいところですが、殊にこのASDの障害については本人の障害度ではなく多数派側の受け取り方で社会の中での障害度が決まるようなところがあります。

この本の中では筆者が交流した数人のASD当事者から、その特殊な認知特性の世界を覗きます。

その特殊性の面白さもあるのですが、その世界観の対比として我々が自分自身のことを知ることにつながっても行きます。

私自身も、嫁と娘のことを知りASD発達障害を知ることによって自分自身のことを考えられるようになりました。

人間というのは多様で複雑なもので、そこが面白いんですね。

本「自閉スペクトラム症の女の子が出会う世界」サラ・ヘンドリックス

自閉スペクトラム症の女の子が出会う世界 幼児期から老年期まで/サラ・ヘンドリックス/堀越英美【3000円以上送料無料】

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感想(0件)

ASDは普通、男性に多いと言われています。

実際、診断されている方の数からもそういうことになっているのでしょうが、筆者は女性のASDは男性のASDとは特性の現れ方に違いがあるために診断が付きづらくなっているのではないかと言います。

言われてみれば定型の男女はそれなりに性差があるわけで、ASDの男女にも性差があるというのは自然ですね。

そして今のASDの判定というのは男性のASDの特徴寄りなので女性ASDは診断されづらいのではないかと言うことです。

内容的には乳幼児期から老年期まで特徴や困り事など書かれつつ、ASDの当事者や家族のインタビューの生の声が多くて読みやすくなっています。

うちにも女性のASDが二人いるわけですが内容的には二人の説明を書いてあるかのようです。本人たちがこの本を読めたらいいんですが知的に難しいところがあり読んでくれない(理解が難しい)のでちょっと残念ですが、まあ知的に高かろうが低かろうがそれなりに色々大変なのがASDなのでそれなりにやっていきましょう。

本「失われた時を求めて 14」プルースト

【中古】失われた時を求めて 14 /岩波書店/マルセル・プルースト(文庫)

価格:1,216円
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いよいよ最終巻です。この本も結構ページ数があるかと思いきや後ろに250ページくらいの索引があったりするので本編は300ページほどです。
サロンに入った「私」はそこで時が経ち変化した人々を見て、時が人に与える影響の大きさに愕然とします。
そしてその変化は自分自身にも起こっていて、それを人々の反応から気付かされて驚いたりします。
その中で、美人は時が経ち崩れると劣化するがブスは怪物だから時の変化に影響されないとか、中々現代では問題になりそうな表現しちゃってて最高です。

このサロンはゲルマント大公のサロンなのですが、ここでのゲルマント大公妃とは実はかつては貴族のサロンに対向するブルジョアのサロンの主催者だったヴェルデュラン夫人です。ここに集まった人々もかつては貴族のサロンとは縁遠かった人々です。

ゲルマント大公自身も老齢ながらオデットの愛人となり牛耳られています。シャルリュス男爵は耄碌し、ロベールは戦死し妻のジルベルトが幅を利かせています。かつての大貴族ゲルマント家がブルジョアに乗っ取られているわけですね。

しかしジルベルトとロベールの娘が将来名もなき文士と結婚して家名を落とすことまで語られています。

結局、人間は生きている間に変化し続け、記憶も置き換わり、そんな人々が集まって「今」ができていきます。

サロンに集う人々の変化を見て「私」は「今」というのは延々と続く「時」の中にあり続け、どんな過去の時間もその時の「今」であり人々それぞれの「今」や「変化」があったのだと気づきます。

そんな世界で永遠に変わらず大切なものを残すのが芸術であり、「私」はそんな小説を残り短い人生でなんとか書こうと決意して物語は終わります。

 

結局全部読み終わるまでに10ヶ月位かかりました。

万人にお勧めとはとても言えませんが、ジョギング始めたらマラソンに挑戦するようなもんで、いい経験じゃないでしょうか。もう2,3冊くらいの小説なら長くて手に取りづらいとは思わないことでしょう。

「完」

本「失われた時を求めて 13」プルースト

失われた時を求めて 13 / 原タイトル:A LA RECHERCHE DU TEMPS PERDU[本/雑誌] (岩波文庫) / プルースト/作 吉川一義/訳

価格:1,386円
(2022/3/23 21:29時点)
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最終章「見出された時」の1ですね。

序盤はジルベルトとサン=ルー夫婦の顛末やらジルベルトとの昔話です。1巻目では「私」から見たジルベルトとの交流だったものがジルベルト目線からの話がえがかれます。

その後「私」は病気療養で10年くらい話が飛びまして第一次世界大戦の最中の話になります。戦争中の生々しい時期でありながらパリの人々はニュースを見聞きしたり話したり、それはそれとして日々の生活を続けてどこか現実味がありません。丁度今の日本のようでもあり人間の本質的なところがかかれているんだなあと感じます。

シャルリュス男爵はいよいよお盛んで「私」は偶然男爵が男娼館でベッドに鎖で縛られムチを打たれているのを見たりします。

友人サン=ルーは張り切って戦場に向かってあっけなく戦死してしまいます。

その後「私」は再び長い療養で更に10年くらい進みます。

「私」は長らく小説家を目指しつつ自分の才能の無さを痛感して過ごしていました。

そんな中で久しぶりにパリに帰ってサロンに出かけた「私」は、物語序盤で紅茶に浸したマドレーヌで記憶を想起したように立て続けに些細なきっかけで記憶を想起し芸術について開眼します。「失われた時」を「見出す」というわけですね。

後半100ページ位文学論が続きまして最終巻へ続く。