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本「シャーデンフロイデ」中野信子

シャーデンフロイデ 他人を引きずり下ろす快感 (幻冬舎新書)

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美人な脳科学者の中野信子先生の本です。

人間性」とはなにか。倫理観や愛や正義といったものの正体はなんなのか、という話です。

シャーデンフロイデというのは妬みから人の不幸を喜ぶような感情のことだそうです。

なぜこんな感情が淘汰されずに残っているのか、そこにオキシトシンというホルモンが関係しているのだそうです。

人間は集団で生活するように進化し社会性を高めてきたのですがそこに作用してきたのがオキシトシンで、愛と絆のホルモンといえるようなものだそうです。

愛と絆で集団が結束すると、その集団を守る社会性の正義ができ、集団のルールを逸脱しているものを発見、除去するようになっていくそうで、そういったときにはごく平凡な人でも平気で攻撃し残虐になれるそうです。

社会性があり倫理観の強い人と理論的、合理的な人では普通、前者のほうが善良とみられがちなのですが、実はそちら側の人の方が攻撃的で非寛容で残虐になりがちだ、ということなんだそうです。

学校のクラスにしろ宗教にしろナショナリズムにしろ、そういった仲間意識や愛情が強いほど逸脱者や異物にたいして排除の気持ちが強くなっていってしまうのです。そういった気持ちを利用されてしまえばテロリストも作れるし戦争だって起こせてしまう。

人間は自分で考えて生きている気がしているものでしょうが、脳内麻薬の快感に導かれて集団に属し行動しているという側面もあることを自覚しなければいけませんね。

その上、人間の脳というのは本来できるだけ楽をしたい、自分で考え自己決定することを避けたい、という特性があるのだそうです。

占いや宗教で導いてもらったり上司に命令されて働いたり。

そういったときにある役割を与えられたりするとごく普通の人でも役割に合わせてひどく残虐なことでもできてしまうということをミルグラム実験スタンフォード監獄実験などいくつかの実験を紹介されていて興味深いです。

最終章では、なぜ人間が一見愚かしい戦いをしてしまうのかという話になります。

人間は本来戦うことが好きであることに加えて、集団を守る社会性が強く出てしまうときに、正義感からの正しい行為として戦ってしまうのでした。

このような脳内麻薬による正義中毒に突き動かされないように生きていかなければならないわけですが、人間の大多数がそうなるのはいかにも無理そうですね。

面白いし、一気に読める分量なのでおすすめです。