昭和のおっさん

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本「ケーキの切れない非行少年たち」宮口幸治

ケーキの切れない非行少年たち(新潮新書)

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結構話題になった本ですね。

非行少年が結構な割合で発達障害や知的障害を持っていて、それが理解されず援助もなく非行に繋がっているというような内容です。

障害があろうがなかろうが犯罪はまずいわけですが、もし障害が理解され適切な援助がされていれば犯罪行為に至らずに済むかもしれないし本人も少しは楽に生きられるわけですね。

ではなぜ見過ごされがちなのかといえば家庭環境などの要因もあるのですが、そもそもグレーゾーン近辺の発達障害や知的障害はひと目で分かるようなものでないからです。

軽度の知的障害くらいだと「学校のクラスにいる」とか「知り合いにいる」くらいの関係のひとでも中々わからないと思います。

わたしは嫁を20年くらい見てるわけですが、ずっと「ちょっと頭悪いのか?」くらいにしか思ってませんでした。試しにケーキを三等分やらせてみたら本の帯の通りに線を引いておりました。うちの嫁や子供は非行はしていませんが、この本の説明する「困りごとのある子」の内容はほとんどそのままあてはまります。

しかし周りに気づかれない程度の障害だから大したことないのかというとそんなことないわけです。色々と困ってはいるわけですが、しかし本人たちは生まれたときからそういう状態なので「自他の違い」に気づきづらいし「困っているんだ」と思ってもきちんと言葉にして伝えたりできないわけです。

将棋の渡辺明名人が「自分は努力をして強くなったと思っていたから、自分より弱い人は努力が足りないのだと思っていたけど、自分の子供に将棋を教えてみたら自分には将棋の才能があったんだということがわかった」というようなことを言ってました。

人間は「自分は当たり前にできること」を出来ない人のことが理解できないことが多いんですね。

「遊ぶ金が欲しかった」「人を殺してみたかった」というような短絡的な犯罪のニュースをみて「なんでこんなことするんだ」「何考えてるんだ」と思う人は、標準的な脳を持っているので、標準以下の脳が何をどう考え(というか考えられず)こんなことになってしまうのか、ということがわからないわけですね。

おそらく人口の7、8割くらいは標準的な脳を持った方々なので、残りのマイナーな人のことを知らなくても全く困らないわけですが、2割はいるとしたら誰でもどこかで出会っているだろうし、近しい人になる可能性だってそこそこあるんじゃないかと思います。なるべく不幸な人を減らすことが結果的に全体の幸福につながるんではないですかね。